尼崎のおばちゃんが摂津まで来てくれた理由
フロントに立っていると初老の女性のお客様がこんな事を言ってきました
”私はな、チェーン店が嫌いなんや、食べ物屋さんもチェーン店には行かへんのや”
どうしてですか・・・と聞くと
”何処へ行っても作りは同じで、おんなじ味で大して美味しくないやろ、接客かてマニュアルや”
なるほど
”おふろ屋も同じや、せやからここは気に入っとったったんやで、ちょっとぼろいけどな・・・・”
すみません(/ω\)
”せやけど、なんかちゃう雰囲気があって独特やろ、おばちゃん尼崎から来とーんやで、なんで閉めんのや・・・”
なんだか涙が出るほどの嬉しいお言葉です
そして反省すべき示唆がいっぱいです
目次
チェーン店を真似してはいけない
独自の調理スタイルを持つシェフ、研究熱心でこだわりが強く、それでいて基本に忠実でありながら奇抜なアイデアを形にしてゆく
彼の料理は万人受けする訳ではない、到底理解できないと言う人もいれば天才と絶賛する人もいる
そこに集う人々は料理だけでなくシェフの生き方にも共感を持ち、その空間を共有する事に歓びを感じる
好き、嫌いはあるにせよそこにはシェフの個性が存在している
シェフは全てのお客様を意識するのではなく、自分のポリシーを意識し、そこに共感してくれる人たちがどうすれば歓びを感じるのかを追求しなければならない
チェーン店とはメニュ―構成、価格、オペレーションが違って当然
これは何も高級店と大衆店という訳でなく、例えばおばちゃんが切り盛りする個性的な大衆食堂でも同じことが言える
17年間を振り返ってみて
比較的早いスーパー銭湯創成期から業界に参入をしました。
業界が成長期、成熟期に至るまでの長い期間を振り返ると常に頭の中には”競合店”という言葉が強くありました
温浴施設と言うだけで規模の大小や個店なのかチェーン店なのかそういった事は深く考えず強い競争意識だけが際立っていました
”お客様の為に”という呪文を隠れみのにポリシーもなく実はお客様ではなく競合だけを意識していました
隣の施設にあるモノが自店になければ許されない、
隣の施設より高い値段設定は許されない
そんな風に思っていた時代がありました
その理由は「お客様の為」????
でもお客様はそんなことは求めていなかったのです
心のざわつきは見るべきものが見えていないから
入湯税や下水代がかかるのを承知で昨年末売却した門真のお店は運営途中で無理に天然温泉を導入しました
お客様はもちろん喜ばれました
少しだけお客様は増えました
経営上の都合でせっかくの導入したこの天然温泉の利用を廃止しました
お客様は残念がられました
少しだけお客様は減りました
老築化が進む中で摂津のお店では嘗て下げ続けていた入浴料金を上げました
小言を言う方よりも圧倒的に”しゃーないな”との声を頂きました
そしてお客様の数は値上げ前と変わりませんでした
こういった経験をして競合店を意識する事を止めました
意識するのは「施設」でなくて「経営」が共感できるかどうか?
新しい施設ができる度に競争を煽る人達や心配顏をする人たちの事も気にしないようにしました
そうすると心のざわつきがなくなりましたし、
業界への拘りも消えると学ぶべきお手本が無数に広がった気がりました
尼崎のおばちゃんありがとう
色々な理由で温浴事業の撤退を決定しました
実は会社が温浴業界からの撤退の方向に舵を切ったのはもう5年以上も前にさかのぼります
色々な理由は「競合店」しか意識の無かったころに生じた事が大半です
こういった負の遺産を引きづりながらも最後の1店舗を今日まで運営できたことを幸いに思います
そして、尼崎からやってくるおばちゃんのお客様の言葉をちょっとだけ誇りにさせて貰います( ;∀;)
閉店までちょうどあと1週間
尼崎のおばちゃんと同じ思いを持って頂ける多くのお客様に意識を向けて頑張りたいと思います
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