冷たい顧客名簿と暖かい顧客名簿

一般価格と会員価格、館内利用のポイント付与、スーパー銭湯や日帰り温泉では独自の会員システムを持っており、顧客リスト上には多くの会員の個人情報が溢れている。商売を行う上では顧客リストを持つことはセオリーとも言えるが、このセオリーの意味を誤解しているケースがまま見受けられる。

集めた顧客リストをどう活用するかがセオリーであって、リストを集めることが目的ではない。

闇雲に発券した有効期限のない使われてポイントが残ったカードが数千枚、あるいは数万放置されている場合、見えない負債が数百万から数千万円にも登るケースがある。定期的にイベントなどを行なってポイントを吐き出させることで販売の機会を高めるといった活用がなされてこなかった顧客リストの情報を活用してこなかった例の一つだと言えます。

顧客名簿に多くの名前があるのにその人たちとの繋がりを持てっていない、顧客と言うよりも利用経験客を綴っただけの名簿を冷たい顧客名簿、積極的に関わりを持ち関係性を保つために使われる顧客名簿を暖かい顧客名簿だとすると、冷たい顧客名簿を抱えてどうしたものかと悩む施設は一体どうしたらいいのでしょう・・・?

 

大阪に百八十年以上続く「たこ梅」と言う老舗のおでん屋さんがある。5代目店主の岡田さんはここ8年間で集めた1000人の顧客名簿に載るお客様と強い関係性を築き連日常連客で賑わっている。

たこ梅の顧客名簿は「大福帳」と呼ばれている。江戸時代の呉服問屋がつけていた顧客台帳は「大福帳」と呼ばれ店が火事になっても「大福帳」だけは焼かずに持ち出せと言われており、その理由は「大福帳」さえあればお店は再建できる何よりも大切な宝であると意味が込められています。

顧客名簿のことを「顔客管理帳」と呼ぶことがありますが、この言葉にも違和感を感じるそうです、そもそもお客様を管理なんかできる訳がないと言うのが理由だそうです。

たこ梅では会員になるには条件があり、3回以上お店を利用したことがあること、会員登録票では”たこ梅FUN倶楽部”に『入部届け』を提出することだそうで洒落っ気があります。そこからFUN倶楽部のメンバーである顧客との関係性を深めるため社員一丸となってニュースペーパー、店内イベント、店外イベント、来店時の会話等の取り組みを続けて行くのだそうです。

そんな岡田さんに、温浴業界でありがちな『冷たい顧客名簿』はどう活用したらいいのかを聞いてみました、

岡田さんの答えは

「温かい顧客名簿」と「冷たい顧客名簿」のことを気にされているとしたら、その違いが生まれるたったひとつの理由は「『どこから』それをやっているのか?」という起点がその違いをつくるのだと私は理解しています。お金のために顧客名簿を集めているのではなく自分たちが望むお客さまとの関係をつくる上で顧客名簿が必要なんだろうと私は思っています その中で、収益があがることは活動を支えるために必要なので、当然、収益も訪れるのだろうと思います

とても参考になる言葉ですし、頭を叩かれ多様な、体中に電撃が走ルような感覚の言葉です・

どんな思いで商売をしているのか、そのために大切なお客様とどんな関係性を構築して行くのか・・・

無計画な名前集めも問題ですが、そのリストをどう活用するかと言う発想そのものも間違っていました。もちろん集まった顧客名簿の中には日々施設を支えてくれるリピーターのお客様も沢山含まれていますので私のクライアント様からも相談を受ける訳です・

この顧客名簿を活用するのではなく、この顧客名簿の中の人達とどうやって関係性を深めて行くのかが重要です。冷たい運営から、暖かい運営で凍った目の前の顧客名簿を溶かして行く事が最大の課題です。

 

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小野康成 温浴施設コンサルタント 温浴施設の持つポテンシャルを視座を変えて見つめ直すと実に多くのサービスを提供できます。それを必要としている人が地域には溢れています。17年間で複数の温浴施設・飲食店を立ち上げ現場指揮から得た経験から、施設と地域と人を繋ぐプロデユースを行なっています。