島耕作プロデユース:不健康オヤジのテーマパーク
2017年夏、どこにでもあるような地方都市の健康ランドがスタイリッシュな隠れ屋のような施設に生まれ変わりました。
リノベーションを主導したのは福岡の設計事務所アポロ計画代表の松山真介氏。
今回松山氏のお話をお聞きする機会がありました。
目次
明確なコンセプトはペルソナを決めること!!
正直やる気はになれなかった・・・
今回手がけた熊本のユラックスからリニューアルの相談は何年か前からあったそうですが、あまりにも特徴がないというのか、言い過ぎかもしれないがキングオブ健康ランド然とした野暮ったい雰囲気にオーナーにはいい出せませんでした責任が持てないと断り続けていたそうです。
それでも、オファーを受けたのは変わらなけれなならないと言うオーナーの熱意に絆されたから。
やるからには本気で取り組む!!(ユラックスオーナーの取り組み)
松山氏はオーナーの西生氏とともに、コンセプトを考えるため参考になると思える全国の温浴施設を巡る旅に出かけます。
中年オヤジの二人旅が始まります!
繁盛している施設、永年顧客に愛されて続けている施設、そういった施設を客観的に徹底して見て回ったそうです、長年温浴施設のオーナである西生氏も、温浴施設を受け止める松山氏にとっても、視点を変えて改めて見て体感することには多くの学びがあり刺激もあったそうです。
しかしそこで見たものをそのまま真似するだけではどうしてもちぐはぐなモノになってしまします、多くの施設を見る中でそういった違和感を感じる施設は結構あるのではないでしょうか?
見てきたモノを現状の施設にどう落とし込むか?方向性を決めるのに二人は悶絶しながら悩んだと言います。
健康ランドと言うが、不健康な人が多い!!
ゆらっくすを支えるコアなお客様は男性客、昼間からサウナに入り、風呂上りにビール呷る、健康ランドというけれど健全というよりどちらかといえば不健全、くたびれたおじさんが自分を取り戻しにやってくる・・
具体的にどんな人から絶賛されるような施設にすればいいのだろう?くたびれたオッサンの代名詞、くたびれたオッサンだけど憧れるような存在、このオッサンの生き方を応援したい!
目印になるようなおじさんって誰だろう??
オッサン二人の頭に浮かんだのが課長島耕作!
ペルソナは決まりました、全ては島耕作なら喜ぶ施設、全方位は狙わずに島耕作の為の施設を作ることで意見は一致しました。
共通言語としての島耕作
施設のリノベーションには多くの人たちが携わります。
浴槽・サウナ・ロビー・飲食スペース・リラックスルーム・備品・家具・全体のデザインなどハード要素
食事のメニュー・リラクゼーションメニュー・接客・スタッフなどソフト要素
「島耕作」ならどんな選択をするか?何をして欲しいだろうか?嫌がるだろうか?
外部、内部、多くの人たちが一つの方向性に向かってプロジェクトを進める中で、「島耕作」と言うキーワードを共通言語にすることで相互理解を行うのに随分と役だった言います。
島耕作の決済した数々の仕掛け
ルイスポールセンでお出迎え
これから館内で過ごす高揚感!もう一度ここに来たいと思わせる名残感!フロントは最も重要です。
デンマークの高級照明ルイスポールセンに照らされたフロント、北海道の白樺を組み合わせたフロント台!
島耕作はいつもここでフロントマンと小粋なやり取りを楽しんでいるのだ!!そしてフロントレデイーは気をつけなければならない!!
内湯だけど壁と窓は取っ払う
内湯と露天風呂の間の壁と窓を取り払う・内湯なのに冬は湯気で前が見えない、寒いじゃないかと怒りの声も聞こえるが仕方がない、島耕作は湯気を楽しむそして湯船に浸かりお湯の恵みを感じる・・あなたが島耕作ならきっとお気に召すだろう!!
天然水が降り注ぐ水深120センチの水風呂
ここに来た目的?もちろんこの水風呂に浸かるためさ・・島耕作なら迷わずこう答える!降り注ぐ滝は飲料可能な熊本の名水、深度120センチのキリッとした水に頭まで浸かる!!
マナー違反??野暮なことはここでは問われない、だって島耕作はそれが好きなのだから!!
※もちろん島耕作は水風呂に入る前にしっかりと頭からかけ水を行う
3種類のサウナで汗を流す
同じような湯船はいらない、湯船を潰してオリジナルストーブを使ったここではメデイテーションサウナを始め3つのサウナを楽しむことができるのです。
メデイテーションサウナは自分で水をかけて水蒸気を発生させて楽しむサウナ、サウナ文化の深い北欧で楽しまれているマイペースで楽しめるサウナ。きっと島耕作は北欧出張でその心地よさを体験したのだと思います。
まるで中洲のラウンジ、ステデイーと過ごす漆黒の世界
島耕作は結構多くの女性と浮名を流しています!モテるのです、そんな島耕作が大町久美子のような女性と過ごしたい空間を作った。
館内は徹底的に暗く、間接照明で落ち着きのある空間を演出しています、レストランコーナーはテーブルの上に置かれた料理だけが浮かび上がり館内着の黒いガウンを着た男性は存在さえ分からず、赤いガウンの女性のシルエットが絵になる演出。
かつて象徴的だった日の差し込む天窓も廃止し、そこにはオーロラのような光のビジョンが流れる落ち着いた空間を作りました。
ダイソンとアップルがあればなんとかなる
島耕作が課長時代には存在しなかっただろうダイソンのドライヤーや扇風機、これは脱衣所をお金をかけずリノベーションするテクニックだそうですが、ダイソンを置くことでイメージがグッと変わるそうです!
もちろんフリースペースに置かれた共用のパソコンも置くならMAC、残念ながらwindousでは出せない洗礼された雰囲気を醸し出します。
島耕作は初芝電気だがレッツノートもダイナブックも置いてはならない、島耕作が今居れば断然アップルとダイソンが似合うのだ!
親父は風になりたがる
ユラックスではハーレーも駐輪できるバイクスペース、ヘルメットロッカーを用意、ラウンジには駐輪した愛車を防犯カメラで捉えたスクリーンがあって、バーボンを呷りながら愛車を愛でるというコーナーもあります。
ファミリーカーを卒業した親父は風になりたがるのです。
百戦百勝は善の善なるものに非ず
強豪ひしめく地域でリノベーションを考えた時に重要なことは戦わないということです。
競合しない施設をいかに作り出すか、二人が考え出した”島耕作”のいる施設は万人受けは決してしないでしょう。
本書が“自分らしい”住まい方を求めている人々にとって、
オンリーワンの解答を見つけるヒントになればと、願っています。
リノベエステイト代表 一級建築士 松山真介
リノベーションを行うには経営思想を問いなおし生まれ変わる覚悟が必要です、オーナーの西生氏も、そしてそれを請け負った松山氏も相当な覚悟を持って取り組まれたのだとお話を聞きながら感じました。
その苦労は、昨対170%という数字に現れているように思います。温浴事業の多様性を広める為にも今後さらに多くの温浴施設のリノベーションに携わって頂きたいものです。
※施設の写真はゆらっくす公式HPより引用させていただきました
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