喜怒哀楽を辿る自分史の効能
先日大阪で開催された自分史フェステイバルに河出書房社長の河出岩男氏の講演がありましたので聴講してきました。
河出書房は自費出版で自分史を請け負うことが業務の中心の会社で多くの人が自分の人生を振り返り、文章でその軌跡を残しておられるようです。
いったいどんな人達がどんな意図で自分史を製作し、そのことでその後の人生がどんな変化をもたらすのかとても興味深いお話をお聴きすることができました。
目次
自分を責め続ける人生と、奮いたつ人生
ある一冊の本とその著者についての紹介が冒頭にありました、本間りえさんという女性が出版した自分史と詩集です。
6歳まで元気だった息子さんが突然ALDという難病を発症し、体の自由を失い意思のやりとりも困難になり、介護と自責の年で数十年苦しみ続けてきた母親の手記です。
彼女は長年の介護の疲れと暗い気持ちの中でぼんやりと道を歩いている時に車に跳ねられ入院をします、自身が不自由な入院中に自分の息子への介護の人生を後ろ向きに考えてきた自分に疑問を持ったそうです。
息子は不自由な身体で毎日疲れ切った母親顔を見ることが嫌ではないだろうか。意思表示ができなくてわからないけれど自分なら看病されるのにそんな状況は辛いと感じたそうです。
退院を機に彼女の行動は変わります、介護ありきの自分の人生を振り返り、思いを詩にして出版をしたそうです。
自分を振り返ることで同じ難病と闘う人たちや、珍しい難病があることを社会に向けて発信する必要性を感じ、そこからの彼女の人生は前向きに活発に行動をする母親として、逃げずに試練に立ち向かう女性としての人生を送るようになったという話です。
今では時間を作り、この難病の存在と同じ思いに悩む人たちに向けて全国で講演を行っているそうです。
人生という山登りで遭遇する様々な出来事
人生を山登りに例えると道の途中で様々な出来事に遭遇します、河出氏はそれを箱に例えています。
山の途中で見つけた箱にはいったい何が入っているのか?楽しいことなのか、辛いことなのか、中身は箱を開けて見なければわからないのです。
自分を振り返るということは箱の中にいったい何が入っていたのかを思い出す作業です、山登りの途中であちらこちらに散らばっている箱の存在、もしかしたら自分が通った道で体験した箱を無意識のまま忘れていることもあるのかもしれません,その箱の存在は振り返ることでしか見つけられないことも多くある筈です。
箱の中には答えは入っていない
箱の中身は一人の人間が生きてきた体験です、中身がどんなものであったとしてもそれを軽んずることはできないのです、例えどんなに辛いものであったとしてもです。
自分史とはこの箱を開け続ける作業です、しかしこの箱の中には答えは入っていません、重要なのは今の自分がそれをどう解釈するかということなのです、そしてそれが答えなのです。
この話を聴いていると、嘗て学んだ才能心理学の定義を思い出します。
才能とは「心を突き動かす感情を行動に移した結果、生み出される能力」だと教わります、人生の中で体験した様々なことをどのように感じて来たのか、それを理解すれば自分の才能を紐解くことができるのです。
ですから、答えは箱の中にあるのではなく開け続けた箱と箱を結ぶ道にあると言えるでしょう。
どのような道をどのような感情をもって辿ってきたのかということを理解することです。
自分史で得られる3つの効果
自分の山にどんな箱があったのか?振り返りは自分の今までの人生を再確認し、客観的に自分を見つめ直す効果があります。
更に、客観的になることで直面していた時とは違う新たな発見もあるかもしれません、先にも述べたように箱と箱との間には辿った道があります、道を辿ることで当時は気づかなかった新たな発見をすることができます。
そして新たな発見は、新たな解釈を生むことにもつながります。過去は変えることはできないと言いますが、解釈が変わればここから続く未来によって過去が変わる可能性だってあるのではないかとこの講演を聴いて感じました。
答えは辿った道にある
経営者様と現場を結ぶお手伝いをさせて頂いていますが、できるだけ詳しく経営者様の自分史をお聞きするようにしています。
例えば、そのことによって経営理念の新たな解釈が生まれ直面している課題の解決策が出てくる場合もあります。
現場の方々にはそれぞれの個性を再認識して頂くことで、企業の理念を自分に置き換えて解釈し方向性が一致することも多いのです。
自分史というととても大袈裟なことのように聞こえますが、自分が辿った喜怒哀楽を振り返ることなのだと思います。
多くの方の自分史を手掛けてこられた河出氏の講演は改めて勉強になりました
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