温浴施設で観る大輪の花火・我々は川の匂いと夏の夜風である
名画はどこで観たって名画だ。けれど夏の夜空に輝く花火を、家の狭いベランダからではなく、川の匂いと夜風を感じる川辺で見上げればひときわ美しいように、映画館で見ればそれはいっそう胸に沁みる。
名画は大輪の花火である、それを仕掛ける川辺が今失われつつあることを私は惜しむ
失われゆく街中の名画座についてある小説の中で主人公が語るセリフである。
今から30年前、学生時代の僕の下宿の近くに小さな映画館があった、今では考えられない場所にあった古い映画館、エンドロールが終わり館内の明かりが点くとそこには僕を含めて3人の観客しかいない、しめしあわせた訳でもないのに私以外の二人は同じ演劇部の部員なのだ。
スーパー銭湯も淘汰の時代
映画館を我々温浴業界で例えると失われゆく名画座は街中にある銭湯のようなものだと思う。
スーパー銭湯というカテゴリーの温浴施設が登場して約20年、温泉地に出かけることなくレジャーとして温浴をもっと身近に楽しむと言う事で発展してきたが相次ぐ参入によりスーパー銭湯の勢力図も変化が起きている
大型商業施設の最上階でスクリーン数を競うシネマコンプレックスさながらに大型の施設で様々なサービスを提供する施設の業績は堅調のようだ。商圏と延床面積だけで優劣が決まる訳ではないだろうが大型店の出店で競争が激しくなればそれだけでもパイの奪い合いになる事は避けられない。
家の狭いベランダから抜け出すように、家庭のお風呂から抜け出して川辺に腰を下ろすように
配給された作品を資本によって画一的に上映するロードショー館でなく、館主の選択眼によって良い映画を上映する名画座のように
川の匂いと夜風を感じながら眺める花火のようにお風呂を楽しめる施設になるべきである
風変わりな演劇部員だけでなく、多くの人達に共感を受ける施設には名画とそれを選択する眼力が必要である
ここでしか感じることの無い独自の大輪の花火、独創的な花火を打ち上げよう
我々は川の匂いと夏の夜風にならなけらばならない
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