淘汰される産業で生き残る2つの戦略「お風呂Caffe」代表山崎社長インタビュー

先日オープンした三重県四日市しのお風呂Caffe湯守座は温泉道場が手がける施設としてはFC店も含め6店舗目の施設となります。

2017年8月21日に改装前のため陣頭指揮に現場入りして山崎代表に意気込みを伺ってきました!1

「お風呂Caffe」の場天然温泉ユラックス経営譲渡の真相

おの

天然温泉ユラックスは1994年設立された大衆演劇を観劇できる健康ランドで、株式会社四日市ヘルスセンターが運営を行ってきた施設です、今回のリニュアルはFC契約でなく温泉道場の直営店として譲渡を受けたのですか?

山崎

ユラックスを手がける四日市ヘルスセンターの経営者様とは前職の船井総研でのコンサルタント時代から10年以上のお付き合いがあります。私がこの業界に関わる以前からこの商売を繁盛させた尊敬すべき経営者ですが、長いお付き合いの中で信頼を頂きお任せ頂くことになりました。

おの

ユラックスは設立から20年以上は経過しているとは言え、第一回お風呂甲子園で全国の頂点に立つなどサービス面でも定評がある繁盛店だと思うのですが、経営譲渡という思い切った決断を下された訳ですけど、従業員は長年勤めておられるベテランの社員、スタッフが多い、それだけに自身のお店に愛着もあり誇りも持っている筈ですよね、そのメンバーを引き継ぎ発展させていくに苦労も多いのではないでしょうか?

山崎

地域を牽引してこられた施設であるからこそ、私達温泉道場の理念に共感を頂き、今後の10年、20年を見据えてこのような形になりました。何よりもこのお店のスタッフとそして顧客、地域を考えた時に所有するという経営のあり方には捉われず任せて頂くことになったのです伝統を守り続けることも大切ですが、現在のスタッフが今迄以上にワクワクし続ける施設のあり方を真剣に考え、どう進むべきかを考えておられた前オーナーのご意向をどう現実化させていくか、その思いを託して頂けたと感じています。

敢えて順調である施設を更に発展させる為に「人間力を活かす」ことに定評のある温泉道場になら安心してその思いを託せると判断されたのであろう、前オーナーの決断力には潔さを感じます、怨念道場がユラックスをどう料理して行かれるのかは非常に興味深いです。

「お風呂Caffe」は事業の中心を「社員」に置く

気になるのはこの施設のコンセプト、それを温泉道場の得意な分野でどう変えていくのかが気になります

山崎

この施設の大きな特徴は大広間に本格的な舞台や装置があり観劇ができることです。施設のポテンシャルからここは外せない、現代の芝居小屋として従来の大衆演劇を若い世代や海外の人等触れてことのない人にも楽しんでいただけるよう仕掛けていきたいし、さらに大衆演劇に拘らず伝統芸能や、「芸能」そのものを提供して行きたい。「おふろから文化を発信する」が我社のコンセプト、色々と考えています。

「人間力を活かす」という意味で、温泉道場は人材育成にとても力を入れている、引き継いだ施設をどの方向性で牽引するのか、コンセプトはどうするのかは上意下達ではなく徹底的な従業員のヒアリングから導くそうだ。

 何も考えていない従業員はいない、それを引きだせない経営にこそ課題がある、今ある課題や問題を顕在化しその解決方法を具体化する中でコンセプトが決まる。

お風呂café」というブランドは“おしゃれなカフェ”や“こだわりのコーヒー”を提供することが目的ではなない、そもそも「お風呂」自体も手段の一つに過ぎない。手段に拘泥しすぎて目的を見失うことがないように気をつけている、お店のメンバーのテンションが上がることこれが唯一無二の目的だと山崎氏は言い切る。

山崎

僕らの目的は単に事業を拡大すること、売上を上げる事ではない。恐らく100店舗を作る事に僕もメンバーもモチベーションは見出せないでしょうね

山崎氏が創り出す世界は、それぞれの施設が持つ地域やそこで働く人々、施設の特徴、従来の顧客等のポテンシャルを引き出すことに情熱を傾けてでき上がる。温泉道場がおふろcaffeやグランピングをモチーフにした施設を作り、それが話題になると全国にそれを模した施設が続々登場するが、そのどれもが残念な結果を招くのは単なるモノマネであってそこに情熱を傾ける人間力を第一にできていないからだと思う。

おの

本当にやりたいことは「人集め」なのではないかと感じることがあるんですけど、「おもしろ心」を持った社員はエンジンであり、そういった人材が集まる風土を本気になって作り出していますもんね、それがミッッションのように動いていますよね!

山崎

僕ね、本当は学校の先生になりたかったんですよ。大学では教員免許もとってそのつもりもあった。だけどよくよく考えると型にはまったカリュキュラムの中で指導するスタイルはちょっと違うかな、自分らしくないと思ったんですよ。ならば、実社会で経営者となり、夢を叶える為に組織を構築して人を育てようと思ったんですよね。

温泉道場という社名はそう言った思いから命名したのだそうだ。今年の新卒採用は6名、全社員の半数以上がプロパーの新卒採用というのは温浴業界では珍しい

企業の求人難が続く中、特に新卒社員の獲得は大手企業でも至難な時代に、失礼ながらこの事業規模で多くの若者の心を掴み、社員数を増やしている、温浴事業は営業時間も長く営業時外であっても様々な雑用があり不規則だ。

単なるワークとして捉えると決して楽な仕事ではない。

おの

優秀な新卒社員が希望するような業界でなければ業界も、それに属する事業も将来はないですよね、そのことに業界は気付くべきであるが、温泉道場の経営はそういった意味でもこの業界を大きく変えていく可能性を秘めていると思います。ここまでくるのにはご苦労もあったのではないかと思います。

山崎

いやーもう大変ですよ、だけど今の若者はちゃんと自己主張がある。いい意味で独特の世界感を持っていていますよ。彼らの時間の使い方や物の考え方には学ぶべき面も多い、なるほどな!と思うことも多い、しかしビジネスだから全てを許容する訳にはいかない部分もある、価値観を持った人間が居てそれを縛り付けずに良い部分を引き出す、そのバランスの取り方が難しですが、最も重要なところなんです。

事業があるから彼らを当てはめるのではなくと、彼らがいるから何ができるのかを考えていくことが大切なのだそうだ。

この言葉には独自化した運営を行う為の大きなヒントが隠されている。通常は施設がありそこに誰を当てはめるかを考えるがそれは施設ありきなの考え方である、このスタッフがいるからこそこの施設ではこうしたサービスを提供しようと発想を転換すれば社員の数だけ独自化が可能なのである。

地域を育てることが「お風呂Caffe」の戦略

おの

地域の自治体と共同でイベントを進めることや、地元の教育機関とのコラボレーションによる勉強会など地域活性にも力を入れられていますね、それは大局的な見た消費の受け皿を作り出すということでしょうか?

山崎

そうですね、だけど勘違いしないで頂きたいのは地域を活性化させる為にお風呂屋をしている訳ではなくお風呂があってこそ、それをどう地域文化に貢献させていくかというのが手順です。お風呂を使って地域の文化を発信する、地域経済を考えた時にお風呂をどうアレンジしてゆくのかが事業の目的だと思っています。我々の業態の中で、お風呂caffeという業態は確かに商圏を従来よりも広く集客でき流ようになりました、それでもグループ全体を見ると70%はリピートのお客様に支えられています。我々が展開する事業は地域に支持されるレジャーの場でなければなりません。

おの

山崎さんの概念はあくまでも自店の集客とは違った要素があるように思えるのですが・・?一般の温浴事業者とは違う気がする、それは創業時からそう考えていたのですか?

山崎

そうでうね、集客の70%を占めるその地域をどう盛り上げるのかは域外から自店に人を呼び込むことではなく、お風呂というコンテンツを持った我々企業がどうやって地域に人を呼び込むかを地域と一緒になって考えるということなのです。だから最初は内部から随分と糾弾されましたよ、会社が赤字なのになんで自店の集客じゃなくて地域の集客を考えるのかってね(笑)だけど3年、4年とたってようやくそれが効果を出し始めています、お店が地元の商店や企業から支持していただいている、それは地域の経済が良くならないと良くないという同じ価値観を地元とともに共有しているからだと思います。

創業当時28歳だった山崎氏がこれから超ロングスパンで経営を考えた時に目先の利益だけに捉われてはならないと考えていたというから、やはり目のつけどころが違うと言えよう。

 

お風呂甲子園、OFR48は業界へのアンチテーゼ

おの

先見といえば、創業間もない頃からお風呂甲子園の企画やOFR48に参加するなど業界を意識した活動もせれていますよね、あの活動の意図はなんですか?

山崎

船井総研に居た頃から、なんとなくこの業界の閉鎖性というか連携のなさを感じていました、小さなところでいがみ合ったり、ライバル視するようなところがあって、誰かそういうことやらないのかなーと感じていたんですよ、多分社長いい加減にしてくださいって思われていたでしょうね(笑)だけどやるなら今だろう誰も手をつけていないことをやりきることに意味があると思っていますから。正直に言えば「お風呂甲子園」も「OFR48」もこの業界では知らない人はいないくらいの存在にはなったであろうが、今でもなんのことやらと思う方も、そこに意味を見出せない方の方が多数派だと思います、もっと梃入れすべきとも思いますが一定の役割は果たしているとも覆います。

これらの取り組実は度々マスコミにも取り上げられている、プレスリリースを行いうまく利用されているなと感じる。何よりも面白がることの重要性をこういった取り組みの中で伝えているのだと実感できます。癒しや楽しみを提供する触手なのに効率ばかりを追いかけ遊びのない業界へのアンチテーゼである。

温浴業界の星野リゾート「お風呂Caffe」総帥のルーツ

おの

僕は山崎さんは温浴業界星野佳路だと思うんですが、日本のレジャー産業を牽引する星野さんは意識されているのでしょうね

山崎

そう言って頂くのはおこがましいと思います、しかし強いて言えばそれじゃダメなんだとも思います。まず温浴業界のという括弧付きを払拭しなければならないし、星野佳路さんという偉大な経営者のようなものという(比喩も)例えに甘んじてもならないのかと思うんですよ

おの

なるほど、でもそれって凄いですよね。そういった発想というか、山崎さんのルーツはいったいどういったところで育まれたのでしょうか?

山崎

うちは祖父の代から商売をしていました、めりやす工場を経営したいたのでいつかは自分も商売をするのだろうなと漠然と考えていました。両親共早くから自分のことは自分で考えて自分で決めなさいという教育方針で、なんでも自分で判断するように育ててくれて、そしてその判断に任せてくれした。しかし事業に失敗して工場は閉鎖したんですよ。思えばリベンジというかそんな気持ちもあって全く違う事業ですが祖父や父の悔しい思いを引き継いで成功させてやろうという熱が根底にはあると思います

インタビューを通じて、事業の源泉は家業を営む家庭の商売だったのではないかと思いました。商売は身近なもの、山崎家を支える大事なもの。温泉道場がどこか家庭的で一人一人の個性を尊重する、同じ屋根の下で暮らす家族的な暖かさを持っているのはそう言った意味があるのではないかと思います。

 温浴ビジネスを、文化と地域と人二因数分解してどう発展させていくかは、今後この業界の課題だと思います。

 「お風呂Caffe」が作り出す世界は、モノマネではできません、カフェでもグランピングでも芝居小屋でも、そこだけ真似しても成立しない、そのことに多くの事業者が気付けばその精神から学ぶべきことは多いのだと思います。

応援してね!!

The following two tabs change content below.
小野康成 温浴施設コンサルタント 温浴施設の持つポテンシャルを視座を変えて見つめ直すと実に多くのサービスを提供できます。それを必要としている人が地域には溢れています。17年間で複数の温浴施設・飲食店を立ち上げ現場指揮から得た経験から、施設と地域と人を繋ぐプロデユースを行なっています。