元フリーター社長が原点に戻る時 ユーモア鉄道株式会社:清水武
数日前にシミタケさんとご一緒する機会があり、既存の事業会社とは別に「ユーモア電鉄株式会社」という新たな会社を立ち上げたと聞きました
関西ではなく敢えて東京に拠点を作り活動を始めたとお聞きしましたが・・・
神戸と大阪で温浴事業とビジネスホテルの運営を行う企業がなぜで「電鉄」という名の会社を東京で興したのか?
既存事業の水平展開なのか?
誤解を恐れずに言わせて頂ければシミタケさんは誰もが認める熱い想いを持っている経営者
ですがどこかパラレルワールドな人だという印象を持っていて、この時も新たなビジネスのビジョンがよくつかめないまま会がお開きとなり・・・
きっと多くのシミタケフアンも同じ思いではないかと勝手に解釈して大きなお世話とは思いながらもインタビューを申し込んで改めて事情聴取してきました_φ( ̄ー ̄ )・・・
湯〜モア電鉄出発進行
新たな事業は人と人を繋ぎ何か「ワクワクする仕事をしている人」や「可能性を秘めた人」などシミタケさんが興味を持った人と繋がりを持つことを目的とした事業のようです
どうやら既存の事業には囚われず新たなシーズを見つけ出しチャレンジを行うためのプラットフォーム作りを行うようです
人(点)と人(点)を結びレール(線)を引き、やがて線は面となり、街を立体的に作り出す
鉄道会社が行ってきたビジネスモデル、現代のレールであるweb(電)で繋ぐから電鉄だそうです
目下なんのコネもない東京で『電鉄』の名刺を持って人に会いまくり様々な刺激的な反応を楽しんでおられるそうです
パラレルワールドなどと言いましたが、既存の概念に囚われて餅屋は餅をつく人という狭量な考えでは理解できないと反省しつつシミタケさんの半生をお聞きしてきました
悶々フリーター時代
東京の大学を卒業したシミタケさんは地元大阪の鉄道会社京阪電鉄に入社します
配属は運輸部ではなく不動産やビルテナントを管理する部門
ここで、イベントの企画などを通じてマーケテイングを徹底して学び力をつけます
5年がたった頃に自分を試す意味で京阪を退職しベンチャーの不動産会社に転職し学生時代を送った東京へ
しかし転職した企業はとんでもないブラック企業
挫折をしてそこを退職してしまいます
この時27歳、そこから3年間は自信を失いどん底の生活を送ったそうです
工事現場や街中のテイッシュ配りのバイトを繰り返しながら日々を繋ぐ生活、唯一自分の逃げ場は街中の銭湯に通うことだったそうです
もしも社会復帰ができるのなら温浴の事業をしてみたい
とおぼろげに思っていたそうですが、社会復帰とは相当追い込まれていたと推察されます
d( ̄  ̄)
ある日日清食品の創業者安藤百福の伝記を手にし、50を手前に世界的な飲食会社を興した偉人に電流が走ります
“30になったばかりで落ち込んでいてどうする”
ここから自分の考えた企画書を持ってあらゆる温浴事業者に応募をします
単なる就職活動でなく、自分なりの企画を提案するとこが只者ではないと思います
転んでもただでは起きるな! – 定本・安藤百福 (中公文庫)
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- ISBN-104122058694
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- 出版社中央公論新社
音声プレーヤー
なでしこの湯に就職
神戸市の外郭団体が運営を行う宿泊施設併設の温浴施設を指定管理で民間の会社が運営することになり、その運営を行う企業に就職をします
念願叶って温浴の仕事です
宿泊施設、飲食施設、売店部門、温浴部門がある施設の温浴部門の一社員として仕事にありついた感じです
フロント配属の兄ちゃんが7年後にこの施設のオーナーになるとは誰が想像できたことか??
シミタケさん少しずつ成果を出して行きます
現場に張り付き、企画を考え、他の部署を引き離す実績を出します
例えば収穫祭の発案は近隣の農家を巻き込んで街をあげてのイベント
今では当たり前に見られる産地青果の直売安売り
一軒一軒の農家を口説き、五十円均一の青果市、模擬店の出店を企画しました
集客に必要なチラシを10万枚企画しますが
しかし、田舎の施設で10万枚のチラシ投入など前例なし、京阪グループでは日常の販促も親会社は新聞折込という発想が全くない・・・
ここで取ったのはチラシ代70万円を協賛金で賄うこと
1500名の集客をします!!必ず集めてみせます
“吐きそうな思いで書き集めました・・・”
と当時を振り返ります
現場と近隣を巻き込んだ運営手腕はやがて施設全体を活性化させ業績が向上して行きました
突然の転勤命令、君は明日からホテルマンだ
温浴施設を熱望して潜り込んだ企業、ここの本業は多くのホテルを運営する会社です
実績を上げるシミタケさんを会社は好きにはさせてくません
不振のホテルの立て直しの命を受け、大阪のビジネスホテルの副支配人として転勤を命じられます( ; _ ; )/~~~
「箱」で勝負しない「人」で戦う
異動したホテルは老築化が進み、近隣には外資を始め新興のビジネスホテルの台頭が始まっていました
施設で勝負しても仕方がない相手が「箱物」なら「生」で戦おう
小さなことから始めました、例えば館内に花を飾り、観葉植物も造花は使わない
花は活たり、水をやることで個人の思いが宿る
個人個人からは小さなことでも提案を出させ、実行させる
しかし毎日毎日が反発の嵐、
“素人に何がわかる”
それでも怯まない、面従腹背にも根気よく続ける
この施設の業績不振は外部環境に非ず
長い間放置をされていて従業員の心が荒んでいることが原因だと看破していました
君たちの言うマニュアルの笑顔や挨拶で本当にお客様が増えるのか?、そもそもそれを押し付けるだけの会社に対して言いたいことがあったのじゃないのか?大切なのは『マニュアルでない君の笑顔、マニュアルでない君の挨拶』じゃないのか
徐々に意識改革を行います
しかし、単なる精神論で終わらせない、今の自分と過去の自分を比べ少しずつ改善を行う中で去年の同曜日との比較をさせる。
比較の数字は理由がどうあれ自分達が関与した過去の結果であり、今の数字も自分が関与した数字である
それを客観的に冷静に分析させてやるべき課題を自分達で見つけさせるのだ
コンサルタントとして経営者に伝える3つの視点
話は前後するユーモアリゾートの業務の一つに温浴事業者に対する経営コンサル事業があリます
ここで経営者に対して行う事業改革の流れは社内の業務改善と全く同じだそうです
どんな思いでこの仕事を始めたのか
業績が低迷して客観的視点が必要な経営者は本質を見失っているケースが多い。
原点に戻ることが重要なのだなぜこの商売を始めたのかそこに立ち返る為のヒアリングを徹底的に行う
勝つためにはこの世に一つのもので勝負する
商売で勝つには一つの方法しかない、この世で一つしかないものを売れば競争になりようがない
自分がどうなりたいのか?
好きなことは何か?
できることは何か?
それをとことん突き詰めて自分の責任で勝負する
そのためには自分の顔に責任を持てと言う、自分の顔を晒して、自分が行っていることを伝えること以心伝心なんてありえない、伝えなければ伝わらない
なんぼ欲しいのかを明確にする
3つ目は数字だ、何事においてもいくらお金が必要なのかを明確にすること、そのためにどうするのかを具体的に決めて行動をすることだ
この三つが決まれば、1日1日を真剣にそれに向かって過ごすだけのことだという。
業績を伸ばすために必要な4つの指針
さて3つの目標が決まれば4つの指針を掛け算して6にする
その指針とは
- 企画面
- 営業面
- 運営面
- 管理面
それぞれの項目が基準に対して12%の改善があれば、それを掛け合わせれば1、57となる。
4つの視点を押さえて少しづつ変化をさせていく掛け合わせの原理で今の1、6倍を目指すのがシミタケ流業務改善の極意である
5億円を今すぐ返せとは言われない
5億円を今日中に使えとも言われない
名言である
3000万の赤字を改善LBOによる経営権の習得
話を戻します
ホテル事業で担当のホテルの立て直しを行い徐々に業績を改善させる中で古巣のなでしこの湯は業績を落とし始める
なでしこの湯を離れて3年、シミタケさんは大阪のホテルを兼務しながら再び温浴事業の再建を命じられます
戻ったシミタケさんは愕然とします
黒字経営だった温浴部門がなんと単年業績で3000万円の赤字
一体本部は何をしてきたのか?
またしても本部と現場のかけ離れた穴を埋めながら、総責任者として一つ一つ修復をしてゆきます
努力の甲斐あって、1000万ずつ赤字幅を修復してゆきますがこの間会社に疑問を持ち始めます
本部と現場の軋轢を埋め、一人一人と向き合いながら育てていく人員は戦力要員として転勤させられてゆきます
このままこの企業に残ってもいいのだろうか
サラリーマンとしてすでに役員の立場でもあったシミタケさんの苦悩が行動に変わります
この施設を僕に譲ってください
現在の赤字体質で経営権を手にすることはリスクが大きすぎます、しかし負債込みでの経営権の譲渡を申し出ます
会社との決別、男泣きシミタケの心境とは
清水の舞台から飛び降りる思いのシミタケさんに当時の社長は思いがけないことをこと言います
一つは、ありえない金額の提示 負債を抱えた施設にもかかわらず思いもかけない譲渡金額に驚く清水に社長は追い打ちをかけるように社長はこう言います
“譲渡をしたらお前とは一切の縁を切る”
会社との決別を覚悟したものの、社長には育ててもらった恩義も感じていたし、信じていた面もあるのでしょう
男泣きをしながら“それは関係ないんとちゃいますか?”
と返したシミタケさんに社長はこう答えます
“お前はいつかワシにそう言ってくると思てた、せやけど自分の思い通りに経営したいんならその覚悟はせなあかんな・・・
提示した金額はすぐにキャッシュとは言わん、この1年で利益を出してそれで支払え
厳しくも愛情のある言葉である
雛鳥は飛び立つ
やっとの思いで赤字額を減らしてきた施設、その上予想以上の譲渡の権利を手に入れるには1年で残った赤字も含めて黒字にしなければならないということだ・・・
“ありえん、しかしこれを成せば自由になれる・・・”
多くの仲間の助けもあり歯をくいしばる1年で結果を出します
“原価焼却込みですが目標額に到達できたんです”
これで飛び立つことができる・・・そんな清水に思いがけない知らせが入ります、約束をした社長の死
“ひなが飛び立つ時に、親鳥はその責務を終えて死ぬんか?”
この時の気持ちを回想してこんな感想を漏らしています
新経営陣の下、前社長との約束を果たすべくMBOの交渉に臨む段では更に追加の条件提示などあったようです
独立に際してはかなりの思いと体験があったのでしょう、シミタケさんはインタビュの途中で感極まったようです
“株式の持ち合なんかをすればリスクは少なくて済みますよ、だけど(前社長との約束通り)様々な条件を飲み込み完全独立の道を選びました・・
独立をして7年が経過しました
ご存知の方も多いですがシミタケさんの運営する神戸の「なでしこの湯」を中核とする神戸の「ゆーモアリゾート」と大坂の「ニューオリエンタルホテル」は快調な業績を上げています
東京本部新設の「ユーモア電鉄」は誰とも雇用関係を結ばないシミタケさんの実験場だそうです
15年前、“もし社会復帰できたら・・・”
悶々としながら自分の進むべき道を模索していたあの頃
あの街でもう一度自分を試してみたい
“一体、東京で何やりまんの?”
パラレルワールドを彷徨うように映るシミタケさんは再びモラトリアムな期間を持とうとしているようです
そしてそれは恐らくこの15年で孵化し、成長したたようにきっと新たな面白い卵を産むに違いありません
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どん底のフリーター生活からの脱出 なでしこの湯 清水武
おもてなし産業で人に関心のない企業の業績 ユーモア鉄道 清水武
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