グランピングがテーマのお風呂カフェの真の目的とは

img_1296

先日埼玉県熊谷市にオープンしたお風呂cafe bivouacを訪問してきました

本年6月30日に閉店した28年間の歴史を閉じた「サイタマ健康ランド」を引き継ぐ形で同じく埼玉県に本拠地を置く株式会社温泉道場が運営を引き継ぎ再生をさせた物件です

 

健康ランドから初期型スーパー銭湯、多くの施設が老築化し従来の輝きを失う中施設の再生は厳しいものがあります

 

水回り設備が中心の設備産業である温浴事業は目に見えないコストがかかる上に大型施設の台頭で少々の改装では特色は出せず再投資をしたとしても新たな集客は望めない上に価格変更にも消極的にならざるを得ないからです

 

再生店舗だけでなく新規の店も含め今は本当に魅力的な運営をされている施設が少なくなったというのが個人的な思いです、端的に言えば横並びで個性も理念も希薄な経営が多い

 

本当の意味でこの事業に理念を持ち、それを実現するために勉強を続け組織を率いるリーダーが少ないなかで温泉道場の経営は一歩抜け出しています

 

進化ではなく従来とは別のステージに立ったそんな感じを受けます

 

新しい価値を産み出すということ

別荘で寛ぐという価値

今回オープンしたお風呂カフェはグランピングがテーマ

グランピングとは簡単に言えばお膳立てのできたキャンプのようなもので、ホテルやリゾート地で提供するキャンプサービスのようなもの

館内はこのイメージで統一されている、見事なものだし、かなり研究はされていてワクワクする仕掛けでいっぱいでとても楽しめる

しかしこれはあくまでもテーマの一つであり、真のコンセプトは別荘で過ごす時間の提供のようなものではないかと思う

おふろcaffeという名前から解るように基本は日常の生活テリトリーの中で、退避する場所なのだ・・・まさにbivouac

img_1297

既成概念は捨てる

温浴施設のベネフィット、お風呂好きの日本においてそれはいくつも挙げることができます、既成概念の中ではね・・・

この施設は極論を言えば基本的な概念は持ちながらも、温浴施設という固定概念を一旦捨ててから構築されているように感じられます

積み上げ算や足し算ではでない発想、割り切らなければ新たな価値は生まれない。

多くの施設が失敗をしてしまうのは〇〇風なものを作ろうとするから

独自路線で新たな価値を生めば他の温浴施設とは競合する必要が無くなります

 

img_1304

意図的ではあるが温泉道場のウエットゾーン、つまりお風呂の部分はあまりお金をかけずにリニューアルは最低限に抑えている、お風呂だけ見ればどこが変わったのかはわからないレベル

ここで提供するベネフィットは既成概念の範疇に留まる、いや新装改店という概念からすれば見事にそれを裏切るそっけなさなのである

しかし、温泉道場の展開するおふろcaffeはペンション風あり、民宿旅館風あり、日帰り温泉という既成概念の延長から構築された施設とは違った概念を持った全く新しい価値を生んでいます

 地域社会と連携しともに活性化をする

誇らしげなおじさんの笑顔が印象的でした

僕が訪問したのは午前10時ちょっと前

午前9時から10時までは温浴ゾーンの清掃タイムなので館内には入浴待ちのお客さまが結構いました

その多くは年配のお客さま、おそらく改装前の健康ランド時代からの常連様たちと思われます

その中の一組のご夫婦と会話をしてみました

以前と比べてすっかり綺麗になったロビーでこのお店が存続していることがとても嬉しいという事と、そして新しい施設を誇らしげに説明してくださった事がとても印象的でした

 

img_1286

施設が綺麗になってよかったですね

温浴業の使命

温泉道場は一部フランチャイズが他府県にあるものの基本的には埼玉県下で温浴施設の再生物件を複数店再生しています

本部のあるときがわ町は一度訪問したことがありますが想像以上の田舎で、降り立った近くの駅は無人駅でした

ここで経営される玉川温泉は正直この町で経営が成り立つのだろうか?と思わずにはいられないような立地でしたがいざ訪問をして驚いた!詳しくはこちら

実はここではこの施設を中心に市と連携して市の活性化や観光地化を推進した取り組みを続けています

地域のプラットフォームとなる

これからの温浴施設にとって最も重要な要素は温浴施設が地域のコミュニティの土台となることだと思っています

大げさに言えば温泉地や、常磐ハワイアンセンターのような地域の中心ということになりますが、地域の産業となるほど壮大でなくともその町に住む人にとって存在意義のある場所ということが重要です

こういった考えがなくターゲットが不明瞭なビジネスモデルだけを追い続けると陳腐な店しかできないし、結果サル真似のような施設は新規客は根付かず、既存客にも飽きられてしまうのです。

地域の温浴施設がマスを狙うのは戦う土俵が違います、資本にものを言わせて勘違いしている企業がいくつもあり老婆心ながら心配になります。

 

img_1298

人材のいない業界は衰退する

サービス業である温浴業界もご多分にもれず人材難な世界です

しっかりとした人材教育、それ以前に素養のある人達が興味を持つ業界にならないといけない

そういった意味でおふろcaffeには期待したいし、ここで働く人達が単に格好やスタイルでなく新たな概念を学び広めてくれることに大いに期待したい

img_1312
新たなプレイヤーと既存のプレイヤー

この施設に興味を持つ経営者がもっともっと必要だと思う

ここで何を感じるか?それによってこの業界の今後が変わる

ハードだけを模索する経営者はきっと残念な事になる

全く新しい勢力が新しい概念で参入すればあっという間に温浴事業を軸にした新たな産業が生まれるかもしれない

〇〇風ではないオリジナルな文化の創生こそ重要なんだな

本当の意味でそこに辿り着けるのは誰か?

それだけ可能性があり面白い業界だと思います

間もなく30年目を迎える新しい施設を体験してそんな風に思いました

 

img_1277

応援してね!!

The following two tabs change content below.
小野康成 温浴施設コンサルタント 温浴施設の持つポテンシャルを視座を変えて見つめ直すと実に多くのサービスを提供できます。それを必要としている人が地域には溢れています。17年間で複数の温浴施設・飲食店を立ち上げ現場指揮から得た経験から、施設と地域と人を繋ぐプロデユースを行なっています。