浅草「日の出湯」は なぜ話題作りがうまいのか?

去年の2月(2018年)、浅草の銭湯第二日の出湯4代目の田村祐一氏のインタヴューから(前回のインタビューはこちらちょうど1年、改めて話を聞く聞く機会がありましたので仕入れた情報を記事にします。

思えばこの1年、経営される施設で『裸の学校』の定期開催を始めたり、浴室をダンスホールに見当てた『ダンス風呂屋』なるシュールな企画で全国的なニュースになるなど相変わらず発信力のある活動を行っていて動向が気になっていました、その一方で実家であるご両親が経営される銭湯を廃業されるなど彼自身大きな流れのあった1年ではなかったのかと思います。

 

下町銭湯の注目されるイベント変遷

銭湯で行われるイベントは数あれど、田村氏がこれまで行ってきたイベントや取り組みを振り帰ると規模の大小関わらず参考になることが多く、今回はそんな取り組みを振り返りを聞くことができました。

突如現れた新ゴジラ!!銭湯の壁画は広告になる

昨年惜しくも閉店をした蒲田の第二日の出湯には期間限で新ゴジラのペンキ絵が壁面に描かれたことがあります。

お客様は新ゴジラに見下される状況で湯船に浸かるというなんとも落ち着かない状況を強いられていたのです。

大ヒットしたゴジラが太田区で大暴れしたシーンがあるので、大田区と映画会社がタイアップして企画したキャンペーンの一環として描かれたそうです。

このペンキ絵、期間が終わると富士山に書きかわるのですが話題性は十分で随分とマスコミにも取り上げれれていました。

費用もかかることなので、おいそれとはお勧めできませんがスポンサーをつけて(この時の経費はもちろん大田区のイベント経費)行うことで負担なしで大きな宣伝効果になることは実証済みです!

因みにここではアウデイーがスポンサーとなって、新車の壁画も描かれたことがあります。

日本でペンキ画を描く職人は三人しかいないと言われています、費用対効果を考えれば二の足を踏みますが、お風呂独自のイベントとして話題性もあるのでスポンサーも乗りやすいのではないでしょうか。

ペンキ絵の相場は思った程高くはないということでしたので是非どこかで企画しって見たいです、興味のある方はご一報ください!!

 

蒲田銭湯部はマニアに大受け!!

蒲田銭湯部(当時は蒲田のお店で行う)は、銭湯を知らない人に銭湯にきて貰いたいとあれこれ考え、ツイッターで発信をして部員を集め、施設でイベントを行うクラブ活動です。

内容は来店した人が風呂屋の運営に触れる参加型のイベントで伝説のバックヤードツアーは日頃見ることのできない機械室を見学するという企画で人気を博しました、ついでに薪ボイラーで焼き芋を焼いて振る舞ったそうです。

オープ前の風呂掃除体験も結構マニアが集まったそうで、ポリッシャーに嵌る人が結構いたそうです、ポリッシャーって結構心が無になりますので気持ちは理解できます。

足湯おでん大会とか、餅つき大会とか、お楽しみを盛り込みいろいろ企画したそうですが銭湯好きが集まり交流は深まるようです。ただし興味があるのは圧倒的に銭湯愛好家なので銭湯を知らない人を呼び込むという当初の目的はなかなか果たせなかったようです。

売上に繋がる訳ではないでしょうが、楽しい雰囲気はお店に伝播しますのでこういった取り組は大切だろうと思います。

固定概念を脱ぎ捨てる save the 銭湯の効能

save the 銭湯は田村氏が銭湯好きのクリエイター達を訪ねてインタビューを記事を投稿するwebマガジン(save the senntou私も随分と参考にさせて頂きました。

この取り組みの良いところは斬新な発想を持った人達が銭湯について語ること、内部や業界に居ては気づかないことやアイデアを田村氏がフラットな気持ちで聞くところでヒントを得て行くところです。

”勝手なことをいうなー”というミクロ眼で捉えるとせっかくのチャンスも逃してしまいます、視点を変えるこういう姿勢は銭湯経営に関わらず経営ではとても大切なことです、物事を柔軟に受け留めることができなければ顧客アンケートが役に立たないように発想の違う人の話に耳を傾けることで世界が広がります。

田村氏が仕掛けるイベントが常にマスコミに取り上げられる理由はこういったところにあるのだろうと思います。

はだかの学校:お風呂屋には様々な先生がやってくる

上の写真は昨年から取り組んでいる『はだかの学校』公式サイトのイメージ写真を勝手に引用させて頂きました。

写真を見た組合からは呼び出しを受け、公序良俗に反すると絞られたそうですがあくまでのイメージです

実際は男女別々に講師を招いてお風呂の中で授業を行います

 

かなり本格的な授業風景

毎日通ってくる様々なお客様はそれぞれの人生や体験をしている人達だ、フロントに立ち続けて多くの人達とコミュニケーションをとっていると自分の知らない世界を生きてきた興味深い人達が大勢いることに気づいた。

この街に住み続けているおばあちゃんは、東京大空襲をリアルに体験しそして今もこの街に住み続けている。

本や映像では感じることのできない体験者の話を聞いていると爆風で起きた熱波の熱さ、焦げる木造の匂い、五感で感じた体感を共有するように話に引き込まれる。

自分だけでなくその話を聞きたい人を募ったところ二十の人が集まった、おばあちゃんにお願いして話をしてもらった・・・

マグロ漁船に乗っていたとおっちゃん・・・板子一枚下は地獄と言われる漁師の世界!

、その道数十年の金物屋の大将・・大根おろしは5種類ある話!

人生を生きた人は人生の教師になれる、知りたい好奇心があれば誰もが生徒になれる!

お客さまを先生に、そして生徒に、お風呂を学校に見立て素敵なコミュニケーションの場が広がっています。

サイレントフェスダンス風呂屋の応募は2000人

浴室をだダンスフロアーに仕立て、照明を落とし妖艶なライテイングに廻るミラーボール、DJが繰り出す音に酔いしれて踊る大人の世界、壁にはオリジナルのプロジェクションマッピングが会場を盛り上げる・・・

DJや踊っている人達はノリノリですけど、冷静に見ているとどうにもシュールな世界ですよと田村氏は語る

 

サイレントフェスとはお客様はヘッドホンを着用して、フロアで思い思いに楽しむ、それぞれは大音量で音楽を聴きながらノリまくるがフロアーには直接音は流れていない。

音もないのに風呂場で思い思いに踊りまくる集団を冷静に見たらかなりヤバい集いに思うに違いない!!

改めて書く必要はないかもしれないが、”ダンスフロアー”は”ダンスふろやー”を”プロジェクトマッピング”は”ふろジェクトマッピング”を掛け合わした造語である( ? _ ? )

本格的でへんてこなこの企画は開催前から大きな注目を集め、 NHKや民法キー局を始め多くのメデイアやSNSでも拡散され3000円の参加費で2000名の応募があったというから凄い反響です!!

すでに数回開催していますが、シュールでゆるくて、でもノリノリで踊った後は番台の前で交流し、更にフロアーからふろやーに戻った下町銭湯の湯船で裸の交流を行う、健全なのか不健全なのか解らない世界は毎回プラチナチケットだそうです。

田村さんから学ぶ二つのこと

ここまで浅草日の出湯のイベンとの取り組みを記事にしましたが、単にマスコミ受けするイベントを讃えたいわけではありません。

彼の取り組みがなぜ注目を浴びるのか、そこに多くの経営者の方が参考になるヒントが隠されているからです。

コミュニケーションの意味を大事にする

最も大切なのはコミュニケーションを大事にするということ!

お客様とコミュニケーションをとる、商売をしていれは誰もがその重要性はわかっている筈です、ではコミュいケーションの本質は一体何か?ということです。

本当の意味でコミュニケーションを深めるには相手にどれだけ興味をもちことができるかということだと思います。

彼の著書にはお客様とどのように接してきたか、ハウツーのような形で実体験が書かれていますがいくら本を読んでも人に興味を持てない人には本質は伝わりません。

彼が日の出湯を継いで傾きかけていたお店の客数が増えたのは単に挨拶をして愛想よくしただけと書かれていますが本当にそうかな?というのが私の意見です。

番台に立って、やってきたお客様に、”おもろそうな人やな!”とか、”なんか無愛想やけどほんまはしゃべりと違うかな?”とか観察しながら話しかけてみる、自分の尺度で心に触れよう狙っているのじゃないかと思います。

長年番台に座りつづけている経営者の方や、大きな施設でスタッフ教育に悩んでいる支配人の方は一度ご自身やお店のスタッフの行動を見直してみてください。

人に興味のある店主やスタッフを多く抱えている施設は間違いなくお客様に愛されている施設です。

人に関心があるからお客様から愛される、上辺の会話でないから出会った人から面白い企画を引き出す事ができるのです。

面白かったやってみる

下町の羽生結弦のような風貌で、若手というイメージがありますが実はアラフォーで二人の子供の父親。結構おっさんです!!

様々な企画で話題になるのは”若さゆえ”の行動力と片付ける人もいるかもしれません。

取り組んだ企画やイベントが必ずしも成功して利益を産んでいるかといえば実は大いにクエスチョンマークです、収益という意味では直結していないかもしれません(多分!!)

多くの経営者や施設責任者の方は労多くして実利なしと思われる取り組みを面白いと思ったからやってみる、その結果が話題になっていくのだと思います。

好奇心や行動力は年齢に関係はありません!!

街場の多くの銭湯は時代に取り残され衰退を強いられる産業です、温浴業に関わってきて日本固有のこの文化の灯を守りたいと思う者として、時代に呑みこまれるのではなく年齢に関係なく面白かったらやってみるという気概を持てる人が必要なんだろうと思います。

田村さんの今後の取り組みも目が離せませんし、これに奮起する銭湯経営が続き業界が活性化できればいいなと思います。

応援してね!!

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小野康成 温浴施設コンサルタント 温浴施設の持つポテンシャルを視座を変えて見つめ直すと実に多くのサービスを提供できます。それを必要としている人が地域には溢れています。17年間で複数の温浴施設・飲食店を立ち上げ現場指揮から得た経験から、施設と地域と人を繋ぐプロデユースを行なっています。